しおん🐾🐾しおん🐾🐾2015年04月20日 10:14プロジェクトマネジャー(PM)は、SEとしてリーダーを務めたあとのキャリアパスとなっている場合が多い。しかし本来、PMとSEの仕事は異質なもので、必要なスキル は異なる。 実は、PMはSEの延長線上にあるものではない。SEは、主として自分のスキルを使って設計を進める。経験を積んでいれば、作業を見積もるのは難しくないし、問題があっても既存の経験知で対処できることが多い。 PMは違う。プロジェクトは一つ一つ異なるから、経験だけでは対処できない。これ までに経験したことのないリスクを特定して評価し、ヘッジする必要がある。顔も見たことのないステークホルダーを特定して分析し、コントロールする方策も考えなけ ればならない。自ら動くというより、人をはじめとするリソースを動かすことで、問題を解決する。時にはルールや制約事項すら動かす。 一方で多くのSEは、リスク評価やステークホルダー分析、リソースコントロールや制約再考の練習など積んでいない。このため、SEからPMになったばかりの人はそのギ ャップに苦しむという。 ◆普段の生活でプロマネを練習 そこで、SEとして働いているうちに、PMとしての練習を積むことが求められる。といっても、プロジェクト現場での練習にのみこだわる必要はない。普段の生活でも、 心がけ次第では練習が可能だ。 例えば、ダイエットプロジェクト。本プロジェクトに対し、目的や期限を設定する。それを正しく管理できるかどうか、試してみればよい。 まず、何のために痩せるのか、明確になっているだろうか。健康のためか、人に好印象を与えるためか、それとも前シーズンの衣服を買い換えたくないなどの経済的な 理由か。その目的からみて、期限と目標をどう設定するかが明確になれば、プロジェクトは起動する。 さて、例えば3カ月で3kgを痩せるには、どのように計画を立て、進捗を管理していけばよいだろうか。 SEの立場からはシステム構築プロジェクトにおいて、やるべき仕事が見えており、段取りやドキュメントの作り方も分かる。ダイエットプロジェクトではWebサイトでダイエット計画表を見て、まねてみる。毎日取得するカロリー、毎日の測定方法などを考え、うまく進むことをイメージしてプロジェクト計画を立てる。1カ月に1kgずつといったペースも策定する。 ◇うまくいかない前提で計画を立てる しかしそれだけではうまくいかない。PMはSEとは違い、うまくいかないことを前提に計画を立てていく。プロジェクトにはリスクがつきものだ。PMはそこを考える。ダ イエットプロジェクトではどうだろう。「上司から焼肉を誘われたときにどうするか」とか、「なかなか痩せられずに、断念したくなることはないだろうか」といったリ スクが考えられる。十分な成果を上げずに挫折した、多くのダイエットプロジェクトがあるのだから、リスクマネジメントが必要なのは明らかだろう。 このリスクをヘッジするために、ステークホルダーとしての上司や、心の弱い自分自身を分析する。リスクを特定し、ヘッジ策を立案する。例えば、「家族や職場をダ イエットプロジェクトに巻き込んで支援者とするとともに、自分の弱気を監視・是正してもらう」といった計画を立てるのだ。いわばステークホルダーマネジメントとリ スクマネジメントだ。 そしてPMの場合、ここで終わらない。この計画がうまく進むかどうかを計測する「計画」も必要だ。「支援者のはずの上司がうまく機能しているか、邪魔する側に回っ ていないか」「後者の場合にはどうするか」も計画しておく。このように、PMは「うまく行くための仕組み」を計画しながら、「うまく行かない」場合のことも計画に組み込む。そして、うまくいかないときの二の矢三の矢を用意しておく。 ◆失敗してみるのがお勧め つまり、「計画」の捉え方が異なる。SEは、期限から逆算し、いつまでに何本のプログラムを仕上げればよいか、という計画を立てがち。PMは、失敗しそうなことを見 越して、どんな体制や会議が必要か、情報伝達はどうするか、進捗や品質をどう計測するか、などを計画として考える。 そしてその際に、「このプロジェクトの特徴は何だろうか」と考える。それぞれが独自であるために、プロジェクトでは経験したことのない失敗が予測されるからだ。 ではどうすれば、PMとしての計画が立てられるようになるのか。プロジェクトマネジメントの知識体系「PMBOK」には、やり方は書いていない。習得方法の一つは、実 際に失敗すること。ただ、システム構築プロジェクトではなかなか失敗は許されないだろう。SEの人は、プロジェクトの演習あるいは、ダイエットプロジェクトでも失敗 してみることがお勧めである。 (森側真一=日経SYSTEMS)