今改めて思い返しても、夢のような時間だった。たくさん笑った。目の前で広がる空間は、間違いなくこの世あらざるものだった。過ぎていく時間が、たまらなく愛おしかった。自分もあの空間に立ってみたいと、強く感じた。それと同時に、自分は何者でもないのだとどうしようもない絶望感に駆られた。泣きたくなった。とても温かい気持ちの中にあった、ヒヤリとしたものをどうしても誤魔化せなかった。
自分はまだ戦ってすらいない、その現実をまざまざと突きつけられた。いつまで経っても自分の現実と正面から向き合おうとすらしない逃げてばかりの自分に嫌気がさして、鉛を飲み込んだような気分だった。
楽しくて、愛おしくて、とても悲しかった。
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