詰子が生まれたのは、さて何年前だったでしょうか。 透き通るように透明な稚魚だったこの娘の晴れ姿、母さんにも見せてやりたかったと、しみじみ思う次第です。 そんな透明の時期を過ぎ、やがて鯖の宿命とでも申しましょうか、段々に青くなっていく我が子にも、ご多聞に漏れず、反抗期と呼ばれる時もありました。 「なんで鯖やねん！ どうせやったらウチは本鮪に生まれたかったわ！ どんな潜水艦より速く泳げるんやで？ 串に刺されて炙られるより、解体ショーで華麗に捌かれたかったわ！ なんで？ ねえ、なんで鯖なん！？」 「アホか！ クロマグロなんぞ、黒やぞ、黒！ 真っ黒けっけやど！ 青い方がオシャレやないけ！ 水煮やら味噌煮やら、缶詰にしたってメジャーやないけ！ 負けてへんわい！」 「ツナ缶(ボソッ)」 「え」 今思い返しても憎々しい、いや魚々しいと言いましょうか、そんな時期もありながら、食べ頃(エロ)に美しく育ってくれた娘の、新しい船出です。 皆様、これからも末長く、暖かく見守ってやってください。 いやいや、魚の嫁入りに「船出」なんて禁物でしたな。 方々、青ざめていらっしゃる。 鯖だから元々ですって？ これまた失礼致しました。 ( ｡･_･｡ )