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ロングコートダディ堂前

5月16日(土) 朝、散歩をしようと家を出たが 少し肌寒かったため、一度家に戻る。 何かを羽織っていこうとクローゼットを開くと 学ランが目に入った。 早く散歩に行きたかったのでぱっと学ランを羽織り、 家を出た。 朝の少し冷たい風が気持ちいい。 マスクもしていて、顔の感じも分かりにくいので みな、僕のことを学生だと思っていることだろう。 そう思うと少しだけ興奮した。 そんなことを考えながらぼーっと歩いていると 曲がり角で女子高生と衝突してしまった。 地面にしりもちをつく女子高生。 おそらく咥えていたであろう食パンも 地面に落ちてしまっている。 女子高生が 「いったぁい!ちょっとあんた!どこ見て歩いてんのよ!」 と言った。 僕はおもわず 「いてて…そっちこそどこ見てんだよ!」 と言ってしまった。 すると女子高生が 「もうなんなの…転校初日だってのに! 遅刻したらあんたのせいだからね!べー!」 と言って走っていってしまった。 すまない…女子高生… 君が転校するそのクラスに、 僕はいない。 「あー!あの時の!」 と、ならない。 黙って先生に紹介されるだけだ。 「先生!あたし、あいつの隣なんて嫌です!」 と、言えない。 普通のやつの隣に 普通に座るだけだ。 「なんであんたと私でクラスの学級委員をしなきゃいけないのよ!」 と、ならない。 お前は学級委員にもなれない。 僕は30を過ぎてコント衣装を羽織っているだけのおじさんなんだ。 すまない。 ごめんね、食パンだけもらっていくね。 

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