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ロングコートダディ堂前

5月19日(火) ジーパンは捨てた。 スーパーからの帰り道。 家に帰るまで、影以外の部分を踏んではいけないというルールにした。 影以外の部分を踏んでしまった時の罰ゲームも必要だなと思ったので、 通りすがりのおばあちゃんに 「罰ゲームどうしたらいい?」と聞くと 「今後一切イカを食べれない」と返ってきたので それでいくことに。 ゲームスタート。 イカは食べたいから頑張るしかない。 スーパーからいいペースで影歩きをしていたが、 ついに進める影がなくなった。 家までは残り200mほど。 進むことができなくなったが、 今もポストの影に座っている状態なので、 長居もしてられない。 長居をしてしまうと 「最近まで郵便局で働いてたけど、まだ少し未練がある奴」と思われてしまう。 どうしたらいい。 もういいか、イカ食わんくても。 イカくらい大丈夫でしょう。 タコ食えるし。 そんなことを考えていたその時、 車道を走る車の影が 歩道まで伸びていることに気付いた。 これか…! しかし、ここは交通量が少なめの道路。 車が列をなして止まることも少ない。 走っている車と同速で駆け抜けるしかない。 もう、これでいくしかなさそうだ。 後ろから来る車でなるべく遅そうな車を狙う。 きた、おばさんドライバーだ。 おばさんの車は大体遅い。 このおばさんに並走するしかない。 影が横に来た瞬間、スタートを切る。 いける。 このペースなら次の影まで持つ。 するとおばさんが話しかけてきた。 「なんだい!?私と勝負しようってのかい?!いい度胸だ!」 待ってくれおばさん、そんなつもりはない。 車を見ると、 豆腐店の文字がちらっと見えた。 しまった、豆腐店の車は大体早い。 スピードをあげるおばさん。 さすがについていけない。 「あーっはっはっはっ!」というおばさんの声が遠くなっていく。 ここまでかと、膝をつき諦める。 もうイカが食えないのか。 両の眼から涙がこぼれ落ち、 地面に落ちる。 だが、地面が黒い。 影だ。 まだ影の中にいる。 なぜだ。 おばさんはもう遥か向こうにいる。 どういうことだ。 顔をあげ、周りを見るが 他の車もない。 気配を感じ、 ゆっくりと上を見ると、 銀色に輝く巨大なUFOが街を覆っていたのだ。 本当なんだ。

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