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ロングコートダディ堂前

11月5日(月) 久しぶりに日記を書くことができる。 前回書いたのは二週間ほど前だろうか、ひどく昔のことのように感じる。 今こうやって自由に日記が書けていることに、ありがとう。 二週間前、街をぶらぶらしていると男が話しかけてきた。 「お菓子あげるからちょっとついてきてくれない?」 僕は 「お菓子による」と返した。 男は 「車の中にお菓子ボックスがあるからそこから好きなお菓子を選んでいいよ」と言う。 僕は 「やったー」と言い真っ黒のバンに乗り込んだ。 車はそのまま走り出した。 僕は「すいません、お菓子ボックスどこですかね?」と聞くが、男は何も答えず、ただ運転をしている。 僕は「あの!!お菓子ボックス!どこですか!」と声を荒げる。 だが男は何も喋らない。 イライラしていると、突如眠気が襲いかかってきた。お昼ご飯を食べた後だったから。 僕は眠りについた。 「おい、起きろ」 男の声で目を覚まし、車を降りる。 知らない場所だ。 磯の匂いがする。海の近くなのだろうか。 男に連れられ倉庫の中に入れられる。 この倉庫がお菓子ボックスなのだろうか。 椅子に座らされロープで縛られる。 このロープがお菓子で出来ているのだろうか。 僕は「あの、どういうことですかね?」と聞くと 「お前を誘拐したんだ。おとなしくしていれば何もしない」 ここで初めて僕は状況を把握した。 子供の頃に、知らない人についていってはいけないと言われた事を思い出した。 だいぶ前に言われたことだったので忘れていた。 男は「親の電話番号を教えろ」と言う。 身代金が目的なのだろう。ここで抵抗しても何をされるか分からないので大人しく言うことを聞く。 「携帯に番号が入っている。教えるから携帯を触らせてくれ」と言い、携帯を触らせてもらう。 僕は男の目を盗み、twitterで「やばい」と打とうとしたが、「や」でバレた。 男は「余計なことをするな。頼むから。まじで頼む」と言う。 僕は大人しく父親の電話番号を教えるしかなかった。 男が父親に電話をかける。 だが父親は電話に出ない。 その後1時間ほど電話をかけ続けたが、全然出ない。 すると男は 「充電器持ってる?」と言った。 僕は「持ってないです」と返すと 「ちょっと充電器買ってくる。だがこの倉庫から逃げようなんてことは考えない方がいい。しっかりと見張り番がいるからな。トム!」 男がそう言うと倉庫の隅の方からネコが「にゃー」とでてきた。 「トムが見てるからな。どこにもいくんじゃないぞ」と言い男は倉庫を出ていった。 僕は「トム」と言ってみると、トムは太ももの上に乗ってきてくれた。嬉しい。 だが、落ち着いてもいられない。ここから脱出しなくては。 僕は、切らずに伸ばし続けていた小指の爪でロープを切ることに成功。 そして、父親に電話をする。 父親は電話に出た。 父親は「お、おいっす!ちょっと、なんか知らん番号からめちゃくちゃ電話きてるんやけど!怖くて出れへん!どうしたらいいんかな!これどうしたらいいんかな!」と、ひどく慌てている。 僕は「その電話絶対出んといて!」と言うと 父親は「え、永遠に!?永遠にってこと?!」と言う。 僕は「永遠に!」と言い電話を切り倉庫の出口へと向かった。 倉庫の重い扉に手をかける。 ガガガガと開く扉。 扉の向こうから差し込む光。 「やった!帰れる!」 そう思った。 だが背後から物音が。 振り返るとそこには 本当に悲しそうな顔をしているトムの姿があった。 次回に続きません

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