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ロングコートダディ堂前

7月19日(木) 公園の木陰に座ってゆっくりしていると、おじいさんも木陰に入ってきた。木陰自体が大きいものではなかったので僕とおじいさんは結構体が重なる感じになってしまった。僕が「暑いんでどいてもらってもいいですか?」と聞くとおじいさんは「ここの木陰はのう…思い出の木陰なんじゃとよ…」と言った。誰の思い出?と思ったので「誰の思い出ですか?」と聞くと「ばあさんじゃよ」と答えた。「ばあさんはわしとここでゆったりするのが好きじゃったらしいわ…北海道やら海外やらいろんなとこに連れてやったんじゃがのう…ここでわしとゆったりするのが一番じゃったらしいわ。1年前、亡くなる直前、ベッドの上でそう言うとったわ」「ベッドの上っていうのは…え、その…あれですか?」「違う違う。入院しておったんじゃ」「あ!あー入院の、あー!すいません」「ばあさんはきっとここにおるはずじゃから、こうして今も、ここでゆっくりするんじゃ」すると目の前にいきなり透明のおばあさんが現れて「いますよ…おじいさん」と言った。だけどおじいさんには見えても聞こえてもいないようだった。僕はびっくりして熱中症対策で持っていた塩箱を落としてしまった。塩が地面にばらまかれると透明おばあさんがいきなりジュワ~~~!!!!という音をたてながら消えた。僕は「透明おばあさん!」と叫ぶとおじいさんは「いやわしおじいさんじゃよ、実体おじいさん」と言った。

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ロングコートダディ堂前のトーク
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