「腎臓が寿命を決める」-老化加速物質リンを最速で排出する-
著者:黒尾誠
この本を読めば読者は確実に得をするだろう。それは、若々しく長生きする方法を手に入れ、人工透析のお世話になる確率が低くなると思うからだ。
著者は東京大学医学部医学科卒、自治医科大学分子病態治療研究センター抗加齢研究部の教授で、老化抑制遺伝子「クトロー」を発見し、世界的快挙を成し遂げた研究者である。
腎臓とリンの関係から老化のメカニズムを解明する研究を現在も続けている。
私が本書を手に取った理由は、自分自身が腎臓の病を抱えていることと、身内が昨年から人工透析を開始したことが重なり、腎臓にはただならぬ想いがあったからだ。
現在、人工透析の患者は30万人もいるそうだ。毎年1万人のペースで増加しており、昨年から身内もその1万人の1人になってしまったのだから、病魔におかされるまで自覚症状がでない沈黙の臓器、「腎臓」が恐ろしくもあり憎くてたまらなかった。
人工透析の辛さは本人から直接聞いている。想像を絶する辛さだ。本書によると施術は週に3回、1回につき4〜5時間となっているが、実際は患者の体力に合わせ、看護師さんのご好意で8時間かけて行う場合もあるそうだ。それほど身体への負担が大きい。施術は月水金、日曜日は2日分の毒が溜まり苦痛に耐えている。ささやかな日常ほど尊いものはないと痛感する。
なぜ毎年受ける検査で問題がなかった身内が、突然、尿毒症と腎癌を患い片方の腎臓を摘出する迄に至ったのか、なぜ自分が腎臓を痛めたのか、本書を読めばその疑問は氷解した。なるべくしてなったのである。憎むべき対象は「腎臓」ではなく、「自己管理能力の低さ」だった。
読後は避けたほうが良いとされる食品を強く意識し避けるようになった。腎臓が生命を守る臓器であること、リンが老化と寿命を左右する物質であることの根拠が一般人の私でもきちんと理解できたからだと思う。
腎臓に不安を抱えている人はメカニズムを理解することで不安を和らげ、一筋の光明が見えてくるはずだ。
腎臓を守りいつまでも若々しく健康で過ごす為に、沢山の人に一読を薦めたい。
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