リトークより
人生の上がりは32秒台の鬼脚か。あるいは極限の31秒台を繰り出すか。
親父が競馬好きで子供の頃から競馬場に連れて行かれた。当時2000mのGⅡだった高松宮杯でハマノパレードという馬が直線で転倒した。これを目の当たりにした。
立ち上がってはいるが骨折して脚がぶらぶらになっている。親父はこの馬は殺されるんだよと言った。
競走馬は体重が重いので3本脚では立てない。横になったら床ずれから病気になる。怪我が酷ければ殺すしかない。
それを知ったのは少しあとになってからで、当時は「骨折ぐらいで」と理不尽に感じたものだ。
しんがりで入線し、直後にもんどりうって倒れ、そのまま動かなくなった馬も見た。心臓麻痺らしい。
子供の頃はこうしたシーンを見るのはつらいだけだったが、大人になると考え方が変わった。
競走馬は走ることが宿命だ。彼らに他の価値観はない。骨が砕け散るまで、心臓が止まるまで走って生涯を終える。なんとすばらしい死に様だろうか。命をかけた疾走だ。
自分は病気で若い頃の輝ける人生を棒に振った。しかし今は元気だ。つまり好きなことはできる代わりに、病気だからという言い訳は使えなくなった。
人生を競馬で例えるなら私は3コーナー辺りにいるのだろうか?前半に脚を使っていないので、ここから鞭を入れっぱなしでも問題ない。ゴール板まで疾走したい。
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