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発砲(八方)スチロール美人

松村沙友理、井上小百合 (大学の新入生編) やっと入学式が終わった。 終わりを告げるアナウンスが流れるとすぐに隣の沙友理の様子を窺うようにチラッと見た。 「何?」 沙友理は照れくさそうに言った。 「ううん。何でもないよ……。」 僕も沙友理の照れた顔を見て言いたい事が飛んでしまった。 僕と沙友理は大学の新歓で同じグループになった。 僕は女子と話すのとすぐに緊張してしまうタイプだった。 新歓では嫌でも自己紹介をしなければならない…。 僕は気は進まなかったが勇気を振り絞りときどき言葉に詰まりながらも何とか自己紹介をした。 沙友理は大阪出身らしい。 「関西弁いいね。」 僕の中では珍しい関西弁を聞いて思わず口にしてしまった。 「ホンマに!?仲良くしてな。」 沙友理のノリのおかげか僕は沙友理は話せるようになった。 僕にとって数少ない喋れる女子だろう。 入学式の後はまたまたガイダンス…。 僕はもううんざりだった。 なれないスーツを着て革靴も履いて……。早く脱ぎ捨てて家でゴロゴロしたい。 そんな感情が僕を支配した。 ガイダンスが行われる講義室に向かう… 「ガチャ…ガチャ…」 椅子の鈍い音が隣から聞こえてきた。 僕は音の方向を見ると女の子が困った表情で椅子を動かしていた。 「どうしたの?」 僕はほっとけなかったから勇気を出して声をかけてみた。 「この椅子どうやって座るの??」 溶けてしまいそうな甘い声が返ってきた。 「これはこうやってこうするんだよ。」 僕が座ってお手本を見せた。 「あ…そうやるの。ありがとう。」 またあの甘い声が返ってきた。 僕は少し可愛いなと思い気分が高揚した。 名簿を見てみると隣の子は小百合というらしい。 僕は小百合の事が気になってまったくガイダンスには集中できなかった。 まさしく君と初めて出逢った日それと好きになった日だった。 それからというと小百合と廊下で目があうとお互い照れて会話するという所まではなかなかできなかった。 そうさりげなく視線で合図して…。 僕は目があうだけで満足しているつもりだった。 なぜかこれでよかったと今は思えてしまう。 でもせめて知り合ったんだしLINEくらいは聞いておきたいと思った。 そして初めての授業… 僕は男友達と沙友理と授業を聞いていた。 ふと授業に集中できなくなって周りを見渡してみると前の方に小百合の姿が見えた。 「あっ…。」 僕はその後小百合の事を見ていた。 授業なんてそっちのけ。 小百合が気になってしょうがなかった。 そんな行動に沙友理はすぐに気づいた。 「ねぇ…。小百合のことが好きなん?」 沙友理は僕に尋ねた。 「えっ…違うよ…」 僕は必死に否定した。 「わかりやすいなぁ。ずっと見てたで。」 沙友理は僕を茶化した様に言った。 「LINEとかは聞いたん?」 「まだ…。全然喋れなくて…。」 沙友理の表情が少し厳しくなった。 「好きやったら自分から行かなあかんで。」 「うぅん…。」 それからもまったく小百合とは緊張して話せず時だけが無情に過ぎていった…。 小百合の事は好きなのにいざとなると勇気が出ない…。 妄想だけが自分の中で渦巻いていた。 そんな時沙友理からLINEが来た。 『本当はあんたのこと好きやねんけどあんた小百合の事が好きやからな…。 これ!小百合のLINEのやつだから頑張りなよ。 小百合にちゃんと気持ち伝えへんかったら許さへんからな。』 メッセージとともに小百合のLINEのリンクが貼ってあった。 僕は衝撃でしばらく呆然とした。 沙友理が自分の事を好きだったなんて…。 僕は早速小百合にLINEしてみた。 胸の鼓動が速くなるのが自分でも分かった。 すぐに返事が返ってきた。 僕は嬉し過ぎて叫びそうになった。 それからしばらく何でもない会話で盛り上がった。 小百合は埼玉出身、吹奏楽部のテナーサックスをやっていてサックスの名前は『テナ夫』、戦隊ヒーローが大好きという事が分かった。 そして、勢いに任せてデートの約束までしてしまった。 僕は沙友理に本当に感謝しないといけないと思った。 沙友理の勇気がなかったらこんなに積極的になれなかっただろう。 そして、初デートの日… 僕と小百合は近くの砂浜にいた。 むこうにある島に渡りたい…。 しばらくすると潮が引いてなんと砂の道が現れた。 「すご~い!」 小百合が目を輝かせながら言う。 「ここを大切な人と手をつないで渡ると、砂州の真ん中で天使が舞い降りてきて、願いを叶えてくれるんだって…。」 「へぇ~」 小百合が食いついてきた。 「別名『恋人の聖地』って呼ばれてるんだって…。」 「ふ~ん えっ…でも私恋人じゃないけど…」 「じゃあ!今から恋人になってくれない?」 「えっ……」 「僕は小百合の事が好きだよ。一緒に渡って欲しい。」 小百合はしばらく沈黙していたが一つ首を縦に振った。 そして2人は恋人繋ぎのまま砂の道を渡った。 僕には横にいる小百合が天使にしか見えなかった。 しばらく波の音とともに2人の淡くゆったりとした時間が流れていた。

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  • 発砲(八方)スチロール美人
    発砲(八方)スチロール美人

    衛藤美彩編

    「ふぅ~久しぶりだな…」
    僕は実感しながら駅のホームに降り立った。
    久しぶりに帰ってきた地元はやはり僕にとって爽快だった。
    街の雰囲気や人の雰囲気…。
    一瞬で僕は溶け込んでしまった。

    …突然、携帯が鳴った。
    案の定、美彩からだった。
    少し前から美彩には地元に帰ることを伝えておいたのだ。
    地元に帰ると必ず美彩と屋台に飲みに行く。
    やはり、これがないと地元に帰った気がしない…。
    少しすると美彩がやってきた。
    「久しぶり!元気にしてた?」
    「そっちこそ元気にしてた?」
    一通りの会話を終えるといつもの屋台に向かった。

    美彩と僕は大学の同級生の同じ学部。
    一時期は付き合っていた時もあったが、今はとても気の合う親友といった所であろう。
    そして、今年お互い社会人4年目。
    僕は東京で美彩は地元で立派に働いている。

    屋台に着き一通りの物を頼んだ。
    もちろんあれも……。

    …すぐにあれがきた。

    美彩の大好きなお酒だ!
    美彩はとにかくお酒が好きだ…。
    今日もやはり美彩は麦焼酎だった。
    「本当に麦焼酎好きだよね。」
    僕が、関心したように言う。
    美彩は笑顔で首を縦に振った。
    「乾杯!」
    僕の声の後にガラスの軽くぶつけて鳴らした音が響いた。
    お互いの仕事の話や愚痴、大学時代の話、野球の話など話のネタは尽きなかった。
    あっという間に時間は深夜になろうとしていた。
    「そろそろ帰るか。」
    僕がタイミングをみて美彩に言った。
    「ねぇ。どのくらいこっちにいるの?」
    美彩が突然聞いた。
    「えっ…。2~3日したら帰るけど。」
    僕は、戸惑いながら答える。
    「もう1回最後の夜に飲まない?」
    美彩が真剣そうな表情で聞いてきた。
    「あ、あぁ…。いいけど…。」
    僕は、どうしたのだろうかと思いながらも何も聞かずとりあえず了解だけした。

    2人が解散した後も僕は家路に向かいながら悶々と考えていた。
    美彩がもう一度飲もうと誘ってきたのは初めてだった。
    何か言えなかったことでもあったのだろうかと考えたけど僕には何も浮かんでこなかった…。

    そして、数日後僕たちはまた同じ場所で飲み始めた。
    しかし、美彩の表情がどうもいつもと違った。
    なんか凄くあらたまって緊張しているような……。
    「なんか今日いつもと様子が違うんじゃない?どうしたの?」
    僕は、神妙な顔で美彩に聞いた。
    「実は…」
    美彩が言いかけた途端美彩は泣き始めてしまった。
    「ちょっと!?今日本当に変だぞ。」
    僕は、心配そうに言った。
    僕は、ふと瞳を閉じてみた。
    しかしわ美彩の心の声は聴こえてこない……。

    しばらくして、やっと美彩は落ち着いた。
    「実は、私別れたくなかったの。別れてみてさらに気がついた。あなたと一緒にこれからもいたい。」
    美彩の今まで抑えていたいくつもの叫びだった。
    「バカだな…僕は…なんで気づいてやれなかったのだろう…」
    僕は、落胆しながらつぶやいた。
    「僕も寂しかった。美彩といると落ち着くし、楽しいし、大好きだし……」
    僕も、今まで抑えていたいくつもの叫びが爆発した。

    「結婚して下さい。」
    美彩は、首を縦に1回縦に振った。
    僕は、美彩を大切にキュッと抱きしめた。

    「私のために あなたのために」
    「私のために 美彩のために」

    2人はそう夏の夜空に誓った。