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讀賣新聞 2022年(令和4年)6月16日(木曜日) 石原慎太郎さん 自伝残す  今年2月に89歳で亡くなった作家で元東京都知事の石原慎太郎さんが、自身と妻の没後の刊行を条件とした自伝を書き残していたことが分かった。幼年時代をはじめ、文学や政治、女性遍歴などに関して包み隠さず記している。「『私』という男の生涯」の題で、幻冬舎から出版される。  没後条件に 幻冬舎出版へ  石原さんは1995年、国会在職25年の表彰を機に62歳で衆院議員を辞職した。同著によると、原稿は65歳になる前、<突然、ただ私自身のためにと思って>書き出した。  海を愛した作家らしくヨットの思い出から書き起こす。戦後、軍国主義から急に態度を変えた教師への不信や父の死と弟の裕次郎さんの放蕩(ほうとう)、一橋大進学と作家デビューなどをつづる。 政治「心身の充足なし」  国政活動については、<私にとっては完璧な自己表現たり得はしなかったし、心身ともの充足を与えてくれることもなかった>。文学と政治の両立にも、<日本という社会の狭量さは著名な政治家が優れた小説を書くことを許容しない節がある>と、不満を記した。  自民党タカ派のグループ「青嵐会」の活動は納得いくものだったとし、カミソリで指を切り血判状を作ったこども思い出している。 妻への感謝 でも「好色」  私生活では、<私の人生の過半は、のろけではなしに妻の背に負うたものだ>と、3月に84歳で死去した典子さんへの感謝を記す。一方で、自分が<好色>だったと書き、複数の愛人や婚外子の存在も明かした。  自伝は99年、東京都知事に当選後、執筆が進まなかったようだ。幻冬舎社長の見城徹さん(71)は、10年ほど前に知らされた。  原稿の存在は、石原さんの子どもにも秘密にするよう言われたという。2021年12月9日、別の本を東京都大田区の自宅に届けた。その際家族もいたが、石原さんは、「これが俺の遺作になるなぁ」と涙を流しつつ、自伝については一切口にしなかった。  著書の終盤は、自分にとって<最後の未知>だと捉えた「死」をめぐる記述が増える。<私は一応の仏教信者だが、来世なるものをどうにも信じることが出来はしない>と現実主義的な一面を見せながら、<私は人間の想念の力を疑いはしない>と、不可知なものへの共感も記した。  その上で、生涯を総括し、<私の人生はなんの恩寵(おんちょう)あってか、愚行も含めてかなり恵まれたものだった>などと結ぶ。  石原さんは「国家なる幻影〈国家なる幻影 わが政治への反回想〉」[文藝春秋 文春文庫]など政治上の回顧録や「弟」[幻冬舎 幻冬舎文庫]など自伝的要素の濃い小説がある。だが、今著のように死の直前まで書き続けた自伝的なものはないという。 ( 。・_・。)φ_

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