ログイン
詳細
イデラン⊿
投稿画像

18歳の地図 産経新聞 オーバーサイズの白いパーカをまとった少女は、そのまなざしを一心に手元の台本へ注いでいた。東京都心にあるエフエム東京。数分後には、ゲストとして出演する番組の生放送が始まる。ラジオブースの傍らで、せりふを確かめる彼女のつぶやき声が、張り詰めた空気をかすかに震わせる。 オンエアのランプが灯ると、清宮レイ(18)はマイク越しに明るく透き通った声を響かせた。アイドルグループ「乃木坂46」のメンバーとなって4年目の冬。昨年12月のことだ。 「来年は高校を卒業するので、よりいっそうお仕事に向き合えたらいいな、と思っています!」 10分あまりの出演時間の最後、新年に向けた抱負を語った彼女の声が全国に流れると、SNSには、ファンたちが投稿した激励のメッセージがあふれた。 × × × 大人に囲まれる芸能界で、昨年8月に18歳になった。 「大人…。その定義は難しいけれど、幼稚ではいられないということ」。平成30年のオーディションを経て加入した清宮は「4期生」と呼ばれる。その彼女にとっての「大人」は1期上の先輩メンバーたちだ。 「3期生は周囲や先のことを考えて行動している。無意識のうちに比べてしまい、自分には足りない、と痛感してしまいます。経験も、気づきも、配慮も…」 乃木坂のメンバーは17歳から29歳まで。それぞれが高校生、大学生、社会人であると同時にライバルでもある。浮き沈みの激しい熾烈な競争の世界に生きる18歳は、自分の立ち位置を冷静に見つめ、「背伸びをしたい」と願う自分の幼さも自覚する。 昨年6月、初めてグループを離れて独りで演劇に挑んだ。高校を舞台にしたコメディーで、役柄は自身と同じ高3の少女。ベテラン俳優の荒川良々(47)ら共演者は全員が10歳以上の年長者だった。 演技はほとんど未経験だったが、全19公演をやり遂げた。共演者たちは「まるで親の友人のように接してくれた」。そして、気づかされた。 「大人たちに囲まれた私はいつも、その愛情を受け取る側だった。大人って、もしかしたら、愛情を与える立場になるということなのかもしれない」

前へ次へ
イデラン⊿のひとりごと
トーク情報