ログイン
詳細
滝音(さすけ)

ほぼ毎週恒例、「辻さんちに泊まろうの会」(会員数1)に参加なう。 既に両手足の指総動員しても余裕で数え切れないくらい参加しており、会員カードも、ポイント億倍デーの効果もあって8万枚目に突入している。もはや枕も身体にあっており、肉体的にはこちらに本籍を移しても全然いいくらいのようだ。 今回、この会において自宅を提供してくれているホストホモサピの辻さんが外出している間に、あたしがシャワーを浴びるという流れになった。 熱いお湯に身をゆだねながら汚れと疲れを流す。シャワー室の扉を開けさっぱりとした躯体を解き放った時に違和感に気づいた。 バスタオルがない。 普段はシャワーを浴びる段取りになるとおかんの如し阿吽で辻さんがバスタオルをパスしてくれる。 しかしおかん不在の今回、当たり前のことが当たり前じゃなかったんだと悟る。初めて一人暮らしを始めた時に身にしみた親のありがたみ。よもや再びあの感情に相まみえようとは。 シャワー室からバスタオルのかかってあるハンガーまでたどり着くには部屋を横切れなければならない。さすがにほぼ本籍地と言えど、このストロークをびしょ濡れで駆け回るのは気が引ける。 うーん。脳みそを撹拌させる。 答えが見つからない。 一旦シャワー室に戻りブルブルと水滴を落とす。 あまり効果がない。 そして寒い。 もう一度シャワー室の扉を開ける。 ふと目の前にある洗濯機の上に光り輝くものを見つける。 …バスタオルだ。 あたしは感動にうちふるえた。 おかん。ありがとう。家出る前に準備していてくれたんだね。本当に偉大だよ。敵わねえよ。 そっと手に取る。 湿っている。否、濡れている。 使用済みか。 確かに辻さんが外出前にシャワーを浴びていた。 … ええいままよ!グッと掴み、勢い良く全身を駆け回らす。辻さん、いやおかんの身体をもこのタオルは隅々まで駆け回ったのであろうか。 なぜかわからぬが変な感じがした。なんだろうこの感覚は。 …そうか、これは間接**だ。おかんとあたしの間接****だ。 今更ながら自分が犯した罪の大きさに気づく。罪悪感に身体中が蝕まれる。 最後の一滴を拭ききり、バスタオルを元あった場所に元あった状態で丁寧に置き直した。 いつもの部屋がいつもと違って見える。 もう、昨日までのあたしはいない。

前へ次へ
滝音(さすけ)のトーク
トーク情報