凛としたすきま風が呟いた…
遠くを良く見るのに
眼鏡が欠かせない
にもかかわらず
手元を良く見るのに
眼鏡が邪魔をする
眼鏡があっちこっち
ひとりぼっち
ふて腐れたように
レンズが曇り始める
ますます
見えにくくなってゆく
さらに
置き忘れた眼鏡を探すのに
眼鏡がなくて苦労する
最近
身体が
誤魔化せなくなってきた…
目眼も
耳実も
鼻名も
口知も
死の始まりを
真っ直ぐ伝えてくる
こんなときは…
漱石の小説群を
懐かしく読もうと思いつく
虞美人草からかな…
松園の序の舞を思ひ浮かべ
神経衰弱をしながら
めくれた心に
無邪気な素数を
並べてみる
みるにたえないよのいつわり
いたみのはげしいよのめがね
………………
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