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ikutama読書記録
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    絶望しきって死ぬために、今を熱狂して生きろ〔講談社α文庫〕
     『絶望し切ることとは、曖昧なものを一切排した、晴れやかで揺るがない境地に達すること。…絶望しきった果てには、きっと微笑がある』と見城さんが書き、藤田さんが『人生で何より辛いのは、…悔いを残したまま一生を終えること』と書く。力の限りを出し切る二人の往復書簡。藤田さんが「流されないために、打ち合わせは控えた」と言う通り、見城さんの炎のような
    感化力を持つ「揺るぎない言葉」を、藤田さんが「静謐で丁寧な言葉」で掘り進め、補強する。
     一番心打たれたのは『「負ける」と「負けている」は全く別物である』。終わるまでは全てプロセス。勝ちでも負けでもない。藤田さんの『“負け”を確定させてしまうのは、自らの心の弱さ』という言葉に不死鳥のような生命力を感じた。「文庫版あとがき」のジッドの言葉から得た『夕方に死に、朝生まれる』。この世界の「生命の呼吸」と感動に満ち溢れている。
     『人に刺激を与えられなくなったら、現役引退だから』と考え、誰よりも刺激を受け、刺激を与え続ける見城さん。日々生まれ変わるような“新鮮な心”と自分が考えたことを“やり切る精神”、命ある限り、いつでも誰でも『今を熱狂する』ことはできる。時間と命を大切にする2人の書簡から、情熱が湧いてくるような不思議な力を頂きました。

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    野心のすすめ〔講談社現代新書〕林真理子
     「野心」とは、もっと価値ある人間になりたいと願う“真っ当な心”。「いつでもできる」「何とかなる」と、真剣に考えない人が増えているが、自覚的に上を目指さなければ充足感は得られない。「健全な野心」への第一歩は、現状認識。敗北を認め、屈辱感に苦しむことが、野心への入口になる。「健全な野心」は必ず努力とセットになる。努力せずに結果だけ得ようとする人は、誰かに取り入ることばかり考える。野心を心に宿し、人としての歯応えを持つ。残された時間を自覚すれば、野心は持てる。
     この他に、『エッセイよりも小説の方が正直な自分が出る』は目から鱗が落ちた。フィクションだからこそ、本音が出る。そして「編集者と締切」が自らの怠け心を叱咤する。朝日を浴びた新しい頭で、溌剌と自らの人生と関わっていく。

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    持たざる者の逆襲〔幻冬舎〕溝口勇児

     目の前の出来事に没頭し、特に人と接するときは、相手以上に本気になること。「何を、いつまでに、どのように」実現するか徹底的に考え、行動し、それを継続すれば、必ず結果が出る。自分には疑念、相手には敬意を持ち、自分で決めたことと、全力で向き合う。もし、夢や目標が見つからないなら、原因は「経験不足」。多くのものに触れ、出会うことから始めてほしい。自らの脈拍を上げるようなことをするといい。
     言葉が“運と縁”を引き寄せる。「陰口悪口愚痴」を言うのは自分の課題を受け止められない弱い人。困難は乗り越えられるものしか訪れないから、それと向き合わずに「できない」と解釈して逃げると後悔する。人に言われて耳が痛いと感じるのは身に覚えがあるから。改めて自分の行動、考え方を見つめ直すべき。“事実”は一つでも“解釈”は無数にできる。悩んだ分だけ、誰かの悩みを解決できるようになる。
     勇気とは「恐れを抱いても行動する度胸があること」だ。不安や恐れがあっても、それに負けなければいい。初めからみんなに応援される挑戦は“本当の挑戦”ではない。世の中を変えた大きな挑戦はいつも否定されるところから始まった。「報われないかもしれないもの」に情熱を継続して注ぐことを「挑戦」と呼ぶ。リーダーとは、成し遂げたいことに執着し、言葉を共有し勇気を持って仲間を巻き込める人。“想い”が本物なら遠慮してはならない。

     命を危険に晒して戦い続ける漢、溝口勇児。その生き様に触れたくて読んだ。最後に、あとがきに書かれているエピソードに震え、鳥肌がたった。「印税を全額、持たざる環境で育った子供たちへの支援に活用する」という言葉に、時が止まる程の想いを感じた。

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    天国と地獄〔幻冬舎〕河井あんり
     『自分ひとりが出たいと言って出られる選挙ではない。チャンスが一瞬だけ、顔を覗かせた』社会の繋がりの中で、敵を作るのを覚悟して出馬する。信用で繋がり、心を分けてもらって、やっと当選する。
     「宝積(原敬の書)」が掲げられる自民党幹事長室の前室。歴史に培われた自民党の政調レベルは他党を圧倒する。宏池会、県連等、凌ぎを削る議員達の苛烈で醜い生存競争。
     拘置所の独房で、直感的に感じた“神”の存在と高村光太郎の詩(道程)の境地。品格を保ち、自分を律することで精神を健全に保つ。
     清々しく戦ったはずの選挙。確かに不正はあった。しかし「他の陣営」にも「捜査機関」にも“不正”はあった。大卒後すぐに検察の常識に染まり、世間を知らない検察官が捜査し、公職選挙法の基本も理解していない裁判官がその話を聞く。それぞれの常識と正義で判断するしかない現実。
     圧巻は、地獄の苦しみの末に辿り着いた、“負けた時”の振る舞い。“何もしない自分”の価値を信じ続け、腐らせないこと。『世の中は想像よりずっと寛容で柔軟で、私たちはそれを信じるべきだ。』という言葉に、“新たな息吹”が無限に広がっていくような、優しさと力強さを兼ね備えた想いを感じた。
     無防備なイラストと飾らないコメントから、直筆の温かみを感じ、河井あんりさんの、活字では伝えられない確かな想いを受け取りました。
     河井夫妻について、悪いイメージしか無かった私でしたが、755をきっかけに見城さんのメッセージに触れ、この本を読み
    完全にファンになりました。ありがとうございました。

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    なぜ働いていると本が読めなくなるのか【集英社新書】三宅香帆
    スマホは見れるのに、読書はできない。労働と読書の両立が難しい理由は?
    ◆読書の近代史
    明治時代:黙読文化と図書館が誕生し、労働を煽るために読書が推奨され、修養ブームが始まった。
    大正時代:学生人口の増加、本の再販制、委託制度のおかげで、書店が急増した。良い本を安く読ませるという出版業界の大革命もあり、地位や地域の壁を超えて読書習慣が広まった。休日と通勤時間に読書するサラリーマン。エリートの嗜みだった読書は、身近で役に立つ大衆の文化になった。
    戦後:休息の主役が読書からテレビへ。読書は娯楽から自己啓発に比重を移し、満員電車と企業戦士が読書文化を支えた。文庫本の登場で歴史小説が通勤サラリーマンに爆発的人気を得た。
    バブル崩壊後:日本が世界経済を牽引した時代が終わり、世界を動かす夢を失った労働者。長時間労働の影響で余暇を楽しむために働くのは困難となり、「楽しめることを仕事にすること」が推奨されたが、現実的には、社会ではなく自分を変え、自分でコントロールできるものに注力するようになった。インターネットの普及により、教養や知識よりも、目的のために純化されたノイズのない「情報(知りたかったことそのもの)」の影響力が増大した。人は欲しい情報を得て、個人にカスタマイズされた人生を生きるようになった。

    ◆読書について
    新聞、雑誌は休憩時間。読書は勉強•娯楽の時間。本の主役は純文学、雑誌から生まれた大衆文学、社会と労働を支えた自己啓発。
    文芸書や人文書は自分に関わりの無い情報(ノイズ)を提示するのに対し、ノイズを除去するために読む自己啓発書。しかし“情報”と比較すれば、読書は働くことのノイズになる。教養から娯楽、ノイズへと位置付けを変えた読書。

    教養とは他者の文脈を知ること。他者の文脈をシャットアウトしないことが、働きながら本を読む第一歩となる。私たちは元来
    、何を知りたいか知らないし、何を欲望しているか分かっていない。しかし、仕事をしていると、新しい文脈、ノイズを受け入れる余裕がなくなる。“楽”をするために複雑なことを排除し、一点集中し、没頭し燃え尽きてしまう。複雑さを排除して楽になるより、複雑さを楽しもう。疲れたら休め。そして他者に目を向けよう。

    ◆感想
    読書とは、出会いだ。自分から遠く離れた文脈、人生に触れることが読書の醍醐味。自分が楽をするのは身勝手。自分の殻を破り、他者の人生に触れ、反応し、自らを改めていく。“楽”よりも、世界を楽しむ一歩を探したい。

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    生きる言葉【新潮新書】俵万智
     スマホの普及で圧倒的に増えた“言葉だけの関係”。互いの過去も顔色も把握できないまま、意思疎通を図る。刻まれ、拡散し、暴走する言葉。誰でも発信者になれ、言葉で生きる、言葉の時代。
     伝えるために、音の響きにこだわるラップバトル。言葉というのは、持たざる者が生きるための最後の武器。暴力を封じる口喧嘩。互いに相手の言葉を織り交ぜて競う一騎打ち。
     日本語をリズミカルにする五七音の魔法。己の人生で歌うに値するものを問う。『言葉にするということは、その体験をもう一度生き直すということ』。何を言うかと同じくらい、何を言わないかを考える。作品に神が宿る歌の条件は、“やむにやまれぬ衝動”と“ゼロから全部手順を踏んで自分でたどり着いた境地であること”。短歌が生まれるのは、「心が揺れた時」。アッと思ったら立ち止まって、その揺れを観察する。そこから言葉を探す。器に対する“言葉の濃さ”がちょうどいいと思えたときが完成の瞬間。たとえ一瞬でできたとしても、その一瞬に至るまでの時間の長さや深さが必ず反映する。作品はあくまで副産物、心を掘り当てることが創作の醍醐味。言葉の濃度が非常に大事。濃さがちょうどいいと思えたときが完成の瞬間。

     流石は伝説の歌人、俵万智。金言の宝庫。要所を締める短歌に何度も心打たれた。
    最後とは知らぬ最後が過ぎてゆくその連続と思う子育て(俵万智)

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    破れ星、燃えた【幻冬舎文書】倉本聰
    前編の「破れ星、流れた」ですっかり倉本さんの自伝に魅了され、即購入。流れるだけで、美しくて価値があった青年期から、自らを燃焼させ、輝き、周囲を照らす社会人へ。業界や社会に対する憤り、他者に対する語り負い目を語る。
    痛みを伴って新たなものを生み出す“創”の現場が、知識と金で再生産するだけの“作”の現場へ変わっていくテレビ業界。妥協せず自らの美を実現させるために、独り心を燃やし続ける。
    渡哲也、石原裕次郎、高倉健、勝新太郎とのエピソードはどれもドラマに満ちていた。激しくそれぞれの色を放つ星同士が交錯する。改めてYouTubeでそれぞれの演技を検索し、その存在感について再確認した。“廃屋”から始まる物語、一人の情熱が新たな命を吹き込む。「北の国から」の誕生の背景と関わった人々の人間ドラマ、そして“幻の続編”。まさに「語らずにはいられないこと」の連続。歳を重ねることの重みとその迫力に圧倒された。

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    革命の季節【幻冬舎】重信房子
    虐げられる人達のために、武器を取って戦った。自分の身を顧みず自分の正義に従って生きた革命家。
    海外で同志達と武器を手に過ごした日々。明るい笑顔、美しい涙、愛情と哀しみに満ちた叫び。重信房子はパレスチナのために闘った。そこで本物の人間関係を築いた。こんなにも生命力に満ち、命を清々と使った人がいるだろうか。社会という巨人に踏み潰される“命”を身を挺して守り、フェアじゃないと叫び、闘った。私は重信房子について、ほとんど知らなかった。力無きものの最後の武器は“言葉”。この闘いの記録と言葉、愛と情熱に触れることができたことに感謝します。読み終えて、もう一度冒頭に書かれている見城さんの言葉を読み返して、自分の甘さに気づくとともに、最後の言葉がずっと響いています。『僕は僕で生きていくしかない』

    重信房子
    『未熟な正義…不遜な夢…世界を変えたい、世の中をよりよくしよう、情熱の限りを尽くして闘い…自分のことは埒外…ドン・キホーテのような真剣さ…パレスチナ解放こそ世界の革命の環…強いのではなく「使命」であり「責任」…彼らの身に起こった事態を当事者として引き受ける…日本人として後方から支えるのではなく、日本の場所的条件の中で前線を形成する主体性を持ってこそ、パレスチナの後方の役割を作れるのでは…自分たちの責任において自分たちの責任の持てることから始めよう…平和的であれ、暴力的であれ、人間の尊厳を回復するための抵抗を無条件に支持します。』
    奥平剛士
    『日本で闘っていた時には、“本気であること”が、なぜか滑稽になってしまう…闘いが、闘いこそが希望だって照れずに叫べるところ…闘いの場を与えられて感謝している。…天よ、我に仕事を与えよ…自分の特権を否定し、社会に尽くしたい。最も抑圧された人が最も望む方法で人生を全うしたい…無名戦士として闘い抜く…葬式ではなく祭を!祭こそ、我々の闘いと死にふさわしい。先に行って待っている。地獄で又、革命をやろう。』

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    我が師 石原慎太郎【幻冬舎】牛島信
    団塊物語の中で『石原さんについて、文学から人間まで書かれた本の中で、最高の本』と見城さんが評されているのをYouTubeで聞き、購入。石原さんの「死」をきっかけに、「師」「私」「詩」という順に綴り、「生」の核心に迫る。
    人間の情熱、情念を心底大切にし、純粋で丁寧で優しい生き方を伝えるキラキラと光る数々のエピソード。人生の全てを糧に書き続けるとともに、書くことを糧に情熱的に生きた石原さん。『時の流れとともに「都知事、石原慎太郎」は忘れられても、石原文学は永久に語り継がれる』(要約)は、決して大袈裟では無く、その通りだと思う。
    『肉体を超えて求め合うような痛切な男女の情念、官能、それは如何なる喪失も顧みず、すべてのものを溶かす』(要約)人間の生命力の本質に迫る情熱的な哲学と、
    『死ぬとは全く一人旅。みんな僕を忘れていく。そのうち自分もそれを忘れる。死ぬのはやはりつまらない』(要約)という“死”に対する虚無的な哲学。
    この本を読んで、また新しい石原慎太郎を知ることができました。『灯台よ 汝が告げる言葉はなんぞ 我が情熱は誤りていしや』(辞世)もこの本で知りました。虚無の中で輝く情熱、それを支える言葉。石原さんの言葉、生き様を自分の中に灯して生きていきます。

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    激しき雪 最後の国士・野村秋介【幻冬舎アウトロー文庫】山平重樹
    『俺に是非を説くな 激しき雪が好き』と自らの墓碑に刻み、最後は“死にざま”を見せるために生きた。自決当日は激昂することも険悪になる場面もなく、挙動不審なところは微塵も無いままに、「青少年たちが誇りを持っていける日本にしてほしい…朝日が倒れるか、野村が倒れるか…オレは朝日と差し違える…」皇居に祈りを捧げた後、ニ丁拳銃で自決。
    野村秋介は、自らの美学と判断に従い、弱い立場の人のために、世間を敵に回してでも戦った。その結果、犯罪者にもなった。しかし、何人も心底認め合う仲間がいて、互いのために駆けつけて命を張り、最後まで慕われた。自分の信念を貫くことの強さ、美しさ、人間らしさ、それらを現実に実行することの孤独、感動、悲惨、まさに“国士”であり、己の命を使い切った“戦闘家”
    だった。

    以下、心を打った言葉。
    『寂しくないのは闘っているときだけ…人間が誰よりも強くなれるのは、自分が正しいことをやってるんだという自負があるとき…常に弱者の側に立って権力悪を討つ…多数は真実ではない…朝日新聞という多数派の最たる牙城…命を賭して闘えば、勝ち負けは別として言葉は伝わる…10年付き合っても赤の他人は赤の他人だけど、男同士というのは一瞬だけ魂と魂が触れ合うことによって永遠の友達が生まれる…万事「真っ直ぐ」を貫いてきた…五分のつきあい…どんな強大な敵であろうと、どんな土壇場であっても決して逃げない』