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Mizuno Toshinori

「吹雪」という曲について ピョンチャン冬季オリンピック大会もフィギュアスケート男子シングルでの羽生結弦選手、宇野昌磨選手の金銀メダル獲得によって大きな盛り上がりを見せていますが、音楽好き、特にクラシック音楽大好き人間にとっては短時間ながらもいろいろな曲が聞けるのでフィギュアスケートの時間は特に楽しみに見ています。 そんな中で急に思い出したことがあって・・・結局この文章を書き綴る羽目になりました。 思い出したのは以前の国際フィギュアスケート大会(たぶんグランプリシリーズNHK杯)であまり有名ではない作曲家の超マイナーな曲・・・しかし、自分としてはCDを持っていて耳馴染みで気に入っている曲が旧ソビエト連邦の国の美人選手(当時の表記はグルジア*現ジョージア所属)がショートプログラムで採用していて、表彰台に乗らなかったもののまずまずの演技だったということ、エレーネ・ゲデヴァニシヴィリ選手(1990-)、2013年-2014年のシーズンでのショートプログラム使用曲: ゲオルギー・スヴィリドフ作曲、音楽的イラストレーション「吹雪」(プーシキンの物語による同名の映画音楽より改編〜"ロマンス"・・・。 https://7net.omni7.jp/detail/1300257461 この曲はその後安藤美姫選手、キム・ヨナ選手なども採用している。 https://www.youtube.com/results?search_query=%E3%82%B9%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%83%89%E3%83%95+%E5%90%B9%E9%9B%AA ユーチューブでも聞けます。 今まで何気なく聞き流していたのですが、あらためて聞き直してみて引っかかるところがいくつかあって「原典回帰」、根源のプーシキンの「吹雪」を調べることにしました。まずはあらすじ調べから・・・。本を読まずにあらすじだけで解決するかと安直に考えていたら・・・ロシア文学の大家の一人"プーシキン"はSFは書かないよなぁと思いつつ、興味深い展開に嵌まり結局訳本をまともに読むことにしました。 音楽は既によく知っています。 ゲオルギー・スヴィリドフ作曲、音楽的イラストレーション「吹雪」(プーシキンの物語による同名の映画音楽より改編 この中であらためて引っかかった部分は7曲目の「結婚式」と題する曲。明るく華やかな曲と思いきや不思議な重々しさがあって暗めに進むのです。ひとつ前の「ミリタリー・マーチ」は真逆で軽薄と言い切ってしまってもいいくらいの変な明るさで小学校の運動会で流しても溶け込んでしまうような曲でこの二曲の対比と意味に引っかかりを感じたのです、それでの「原典回帰」。 https://www.youtube.com/watch?v=kzPGzTJK2OY (プーシキンの小説「吹雪」全文朗読一回読み切り) まずは岩波文庫版のものを買って読みましたが、久々の超弩級の古式日本語の訳文に脳内現代語訳担当部署頭脳は大張り切り。古めかしい表現世界を自己無手勝流に創作して現代語として認識、そこからの映像的なものを脳内再生。 謎は解けました。なぜ暗い結婚式だったのか? けしてSF的なものではなく、時代背景として戦争批判など到底許されない中で逆説的に明るく振舞う「ミリタリー・マーチ」。ただ、超薄型の明るさで反戦志向を描き出していること。「結婚式」の悲しみはこのストーリーの根幹を成すもので戦争未亡人が多数発生した間違った世の中の構図を表現していること。その他原作を読み解くことによってそれに付けられた音楽のすばらしさを実感しました。 ゲオルギー・スヴィリドフ(1915-1998)、帝政ロシア時代に生まれ、生涯の大半はソビエト連邦下の強い抑圧の中でなんとか生き抜き、ソビエト連邦崩壊後の1998年まで生存していた20世紀後半のロシアを代表する作曲家のひとりではありますがその知名度は低いものです。ただ、ソチオリンピック開幕式の音楽に「時よ、前進!」という組曲が採用され話題となりました。 (続く)

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