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吉田真悟
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No.672 『調理場という戦場』  斉須政雄著 (2006/04/15 幻冬舎文庫) 2023/03/18(3/17読了) 斉須政雄さんのことを綺麗事だけ言う理想主義者だと勘違いしていた。 なぜこんなひどい思い違いをしたのだろう。大変失礼しました。真逆の人です。そのために、随分と後回しにしてしまったことが悔やまれる。 しかし、この本を読みたいと思ったのは三國さんの『三流シェフ』を読んだからだ。同じフレンチの巨匠であり、同年代にフランスで武者修行をして帰国し、それぞれのお店を有名にしている。二人の接点や共通点などを知ることが出来たら面白いだろうなぁと単純に思ったからなのだが、結論として、この順番に読んで正解だったと思う。 後で知ることになるのだが、2019年に放送された木村拓哉さん主演のドラマ「グランメゾン東京」の中に登場したレストランに『ンブロアジー』があった。長年に渡りミシュラン三ツ星を獲得し続けている世界最高峰のレストランである。そのオーナーシェフのベルナール・パコー氏とともに店を立ち上げ、後の三ツ星店の基礎を築いたのが斉須政雄さんである。※現在は東京・三田にある『コート・ドール』のオーナーシェフである。ベルナール・パコー氏の生い立ちや人間性の素晴らしさにも興味が涌いてくるので、いずれたどってみよう。 斉須さんも三國さんと同時期に、12年もフランスで修行していたので、何かしら接点がありそうだと感じたが、あとがきに少し書いてありました。 三國さんの師匠の一人がアラン・シャペル氏であり、三國さんが苦労して彼の店で修行をした事は『三流シェフ』に書いてある。亡くなる2か月前には四ツ谷の『オテル・ドゥ・ミクニ』を訪れてゲストブックに賞賛のコメントを残している。斉須氏も、このシャペル氏の下で修行したくて手紙を書いたらしいが採用されなかった。 後年、シャペル氏が『コート・ドール』を訪れた際に、この話をしたそうだが、シャペル氏は「私の店で修行しなかったからこそ、今こうして(自分の店を持ち成功して)二人は出会っているのです。よかったね。」と言ったそうである。それまで感じていたコンプレックスが消えたそうである。 二人に多大な影響を及ぼした、アラン・シャペルという料理人に、しばし思いを馳せたくなった。『三流シェフ』をまた振り返ってみようと思う。 さて、この本の中身であるが、料理に限らず生き方や人間関係、組織の活かし方、外国で舐められない様な注意まで書かれている。 1店目の「カンカングローニュ」から6店目の「ランブロアジー」、そしてコート・ドールまで、それぞれの店の思い出が語られ、出世魚のごとく、次々に苦労を乗り越えて成長していくところは『三流シェフ』とおなじだと思った。 置かれたところで出しゃばらず、利益を追いすぎず、かといって経営者としての冷静さも失っていない。毎日、皆で何回も掃除をする結果、ピカピカの厨房が象徴的である。一体、何を目指しているのだろう?私の理解を超えている。 次に斉須政雄著『少数精鋭の組織論』(幻冬舎新書)が手に入ったので、これを読む。「メンバーはリーダーの奴隷ではない」と言い切っている彼の目指す組織はどんなんだろうか?

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  • 吉田真悟
    吉田真悟

    『ブルーネス』伊与原新著

    軟派なサーファーの話しだと思っていたら、東日本大震災にリベンジしたい人が沢山出てきて共感が半端なく、後半は涙が止まらなかった。科学的リアリティがありすぎて、フィクションだということを忘れてしまっていたが、これは運命の一冊かもしれない。

    泣けるのは自己犠牲をいともたやすく実践できる人が沢山出て来るからで、そこがまさに日本人の美徳で私の琴線である。

    魅力的な登場人物達の中で主人公の準平だけが専門スキルが乏しくまとめ役に徹するという、そこだけが不満と言えば不満かな。タイトルの【ブルーネス】(blueness)は色々な海の青さも含む様だがこの準平の「青臭さ」が一番しっくりくる。

  • 吉田真悟
    吉田真悟

    『52ヘルツのクジラたち』
    町田そのこ著 

    私の好きじゃない本は
    ①子供が虐待される
    ②タイムスリップ
    ③人が入れ替わる
    ④夢おち
    などです。

    この本は①なんだが本が売れて映画にもなったし何人かに勧められたので読んでみた。

    口がきけず名前もまともに呼ばれない身体中痣だらけのか細い少年が最後はどうなるのか?という興味だけで読み終えてしまった。

    一つの物語に酷い母親が二人も登場し、その子供同士が出会い、一緒に暮らそうと奔走する話で、最後は上手く収まるのだが、途中は読むのも辛い。

    表題の52ヘルツの特殊な周波数で一方通行で話す孤独なクジラは実在するらしいので調べてみよう。
    聞こえないはずのクジラの声が聞こえたら、運命の番(つがい)を探す人が近くにいるという事だな。

  • 吉田真悟
    吉田真悟

    ↑ 『木挽町のあだ討ち』
    永井沙耶子著(新潮社)
    第169回直木三十五賞・第36回山本周五郎賞 受賞作
    2026/02/27映画公開予定

    一言で言うと「当たり」の本。直木賞、映像化も頷ける。

    映画公開の噂を聞いて急いで読もうと思った。
    時代小説は読み慣れてないが、歌舞伎や芝居小屋が登場し興味が増して結構早く読み終えたな。

    木挽町とは現在の銀座歌舞伎座の少し北の地区で当時は芝居小屋が沢山あったらしい。吉原などの遊郭と並んで「悪所」の代名詞だそうだ。

    時代は松平定信が老中の頃だから、大河ドラマ『べらぼう』と同じ時代。

    とある若い武士が二年前に起きた「木挽町のあだ討ち」の経緯をそばに居た関係者に一通り聞いて回るという展開に。
    なぜ聞き込みを行う人達の生い立ちまで細かく聞き出すのか意図が終幕まで隠され、最後にあっと驚くどんでん返しに唖然とし、爽快な気持ちで喝采を送ることになる。

    登場人物達それぞれの一筋縄では行かなかった人生が深く熱く語られ、あだ討ちを打つ側と打たれる側、それを親身になって支える周りと情と情が交錯して、胸を打つ素晴らしい話しでした。

    ちなみに映画の〈キャスト〉は

    伊納菊之助→長尾謙杜
    作兵衛→北村一輝
    一八→瀬戸康史
    与三郎→滝藤賢一
    ほたる→高橋和也
    久蔵夫妻→正名僕蔵、イモトアヤコ
    金次→渡辺謙
    総一郎→柄本佑
    妙→沢口靖子
    清左衛門→山口馬木也

    『オリエント急行殺人事件』のような、全員が主役のような物語となるので、実力派の演者を揃えたのだそうだ。たしかにね

  • 吉田真悟
    吉田真悟

    ↑ 『最後の外科医』
    中山祐次郎著(文春文庫)

    最初にドクターカイ(χ)って大門未知子じゃんと突っ込んでおきます。

    『泣くな研修医』の雨野隆治は薮さんの成長を伴う等身大の化身で、『俺たちは神じゃない』の剣崎啓介は今の薮さんのイメージに近く、この本のドクターカイは現実離れした天才スーパードクターで全く薮さんと違うと思った。大きなお世話だが。

    アウトローな世界観、苦く辛口な話しは確かに面白いと思うのだがブラックジャックやドクターXとかぶるなぁ。

    これもシリーズ化するのかなぁ。忙しいはずなのにいつ書いてんだろうか。不思議だ。

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    ちょっと寄り道
    『想いをつなぐメス』(俺たちは神じゃない3)中山祐次郎著
    泣くな研修医シリーズから佐藤玲医師が電話で登場していました。玲ちゃんは剣崎啓介の事を知っていたようですぜ