ログイン
詳細
吉田真悟
投稿画像

No.158 映画『ラストレシピ』 監督 滝田洋二郎 原作 田中経一『ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜』 キャスト 佐々木充 - 二宮和也(少年時代 - 吉澤太陽)、柳澤健 - 綾野剛、楊晴明 - 笈田ヨシ、山形直太朗 - 西島秀俊、山形千鶴 - 宮崎あおい、鎌田正太郎 - 西畑大吾、三宅太蔵 - 竹野内豊 製作 ラストレシピ製作委員会 2017/11/18 (11/17 観覧) 【ネタバレ注意です!】 活字を映像化する困難さを感じる作品である。色や音や匂いや熱や味を纏って具体的な料理となって目の前に現れるわけで、誤魔化しはきかない。いかに五感を解放して作り手の意図を理解出来るか?が試される。 映画の冒頭2002年当時、綾野剛演じる柳澤が二宮和也演じる佐々木に携帯電話同士で話すシーンが出てくるが細部に凝っている事が良くわかる。現在、入手困難な当時の携帯機種同士だからだ。それ以外も推して知るべしだ。ハルピンの美しい情景やら当時の満州市内のシーン、明るい色鮮やかな厨房や様々な食材や調理器具にまで全てに拘りが感じられ凄みがあった。手を抜いていないのである。 とにかく予想通り全編に宝石を散りばめたように美しい料理が数多く登場し、目眩がするほどワクワクし、その才能に嫉妬し、味わえない不満より芸術的価値に圧倒される。 料理(レシピ)は果てし無い欲望の結晶であり奪った命に対する尊厳やあきらめ、喰らう側にも畏敬の心が必要の筈だ。そのレシピを極めながら大事な物を失って行く者達が運命に翻弄されながらも、それに抗い自分らしく人生を全うしている姿に感動するのである。 私は原作を読んでから映画を観たのだがこれらは別物と捉えた方が良い。出来たら映画を観てから原作を読んでみて欲しい。その方が作品の世界が一層拡がり深みを増すと思う。壮大な90年間にも及ぶファミリーヒストリーがミステリーとして、ある意志に基づき繰り広げられ最後に種が明かされるという点は共通するが、映画では原作と異なり綾野剛演じる柳澤が存在感があり重要な役回りとなっていた。もう一人の主人公、西島の語学力にも驚かされ、佐々木充のイメージとの違いに悩まされる二宮は左利きなのに右手に包丁を持ち直して奮闘したであろう時間が容易に想像出来る。出て来る料理にも差があり二度美味しい。 親から子へ、子から孫へ、才能と共に受け継がれる数奇な運命のレシピと主人公佐々木充の頑な心が交わり一瞬で融けた時、涙が溢れて失禁しそうになった。 見てから読むか読んでから観るか? あなたのラストレシピが問われます。 【蛇足】 「満漢全席」が満州族と漢族の融合の象徴なら「大日本帝国食彩全席」(原作は204品、映画では122品)はそれを超える日本、満州、中国、ロシア、ユダヤなど世界的融合の文化遺産である。ただし最後は家族のためのもので身近に感じられる。珠玉の作品をもっと観ていたいものである。写真集があったらなぁ。 特に気になった料理(料理名不明) ・島津亭のオムライス(隠し味に八丁味噌) ・豚の角煮(直太朗作) ・鮎の春巻(三枚におろした鮎に骨も入れて) ・冬瓜の翡翠なんとか ・黄金炒飯(柳澤作) ・雑煮風ロールキャベツ(鰹出汁餅入) ・キャビアをまぶした素麺(三宅が喰らう) ・牛カツサンド(子供達の好物) ・枝豆ご飯(楊が炊いたもの) ・鮭定食(娘幸に出したもの) 色鮮やかなプリプリの焼き鮭 四角く切った卵焼き 白いご飯にあさりの味噌汁 香の物・・ ・・・・ To監督さんへ エンドロール中、左に美味しそうな料理が右にクレジットが流れて目が四つ無いと記憶できません。DVD待ちますが。 (^-^; #ラストレシピ #ネタバレ注意

前へ次へ
千冊回峰行中!
トーク情報
  • 吉田真悟
    吉田真悟
    投稿画像

    No.736
    『変な絵』 雨穴著
    (2022/10/20 双葉社)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/22に視聴) 
    ばらばらの不気味な話がどう合体していくのか?
    結末を知りたいのだが、恐ろしいし、不気味だし、躊躇しながら先を読んでしまう。一体誰が主人公?犯人?被害者?いびつな絵の意味が分かってくると恐怖が何倍にも膨れ上がる。
    最終章でやっと最初の絵の意味が分かり、主人公が分かって全部つながった。
    どえれー怖かった。
    夏にぴったりの本。

  • 吉田真悟
    吉田真悟
    投稿画像

    No.737
    『吉原手引草』 
    松井今朝子著
    (2007/3/1 幻冬舎)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/23に視聴) 
    身請けが決まった遊女・葛城が、幸福の絶頂に突然失踪する。多くの人のインタビュー(3人称多視点)でその事実が明らかになっていく。
    どうも、仇討ちが隠れているし、人情噺でもある。
    よくある形式だが、書くのは大変であろうと思う。
    いきさつを忘れてこの文章を今、書いている。はぁ。

    第137回直木賞受賞作と聞いて気になって古本屋で買った。大変面白かった。

  • 吉田真悟
    吉田真悟
    投稿画像

    No.738
    『夜と霧』
    ヴィクトール・E・フランクル著(2002/11/06 みすず書房)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/24に視聴) 
    極限の恐怖でも生還することが分かっていたからなんとか読めたがきつい本だ。
    人間の尊厳やプライドが粉々になったとき、人は何をしだすのか?
    人類全体の負の貴重な体験記録である。子孫に語り継がなくてはならないと思った。
    今日石で追われた人達が明日は別の民を蹂躙する。
    今、ガザで起きていることはこの本とは全く関係ないと思おう。人類の進歩はいつまで止まったままだろう。共通の敵が現れない限り、その連鎖は繰り返すのだろうなぁ。愚かなり

  • 吉田真悟
    吉田真悟
    投稿画像

    No.739
    『読書という荒野』
    見城徹著
    (2020/04/03 幻冬舎文庫) 

    2024/07/02 (Amazon Audibleで3/25に視聴) 
    読んだはずなのに覚えていないことだらけで愕然とする。見城先生のお祖父様は森鴎外の友人で高名な医者だったそうだ。今更知る驚愕の事実。多分忘れただけなのだが。

    いったん読むと、とんでもなく読みたい本が増えてしまう。いや、前回もピックアップしたはずだが、怠慢である。『罪と罰』、『邪宗門』から読んでみるか。

    そうすると『仮面の告白』、『豊穣の海』、『金閣寺』などはいつになったら読めるのだろうかな。細かく読書計画を立てなくてはならないなぁ。早く読めよ自分!

    読書が荒野になる日まで精進しよう

  • 吉田真悟
    umiumi
    投稿画像

    [銀河で一番静かな革命]
    マヒトゥ・ザ・ピーポー

    母からの愛を一度も感じたことがない。
    父親が誰かもわからない。
    愛がないのに抱かれてしまったーー。
    運命に翻弄され、小さな命を日々すり減らす者たちに突如訪れる"あと10日で世界が終わる"という宿命。
    命の終わりが見えたとき、金も名誉も美も持っていない彼らの手元に残るのは「何を大切にしてきたか」という、たったひとつの問いだけで、各々の10日間の最期の営みによって暗にそれが明示されていった。
    遠い誰かの物語ではなく、すぐそこに、すぐ隣りで、彼らが息をしているようだった。
    この物語は[アルマゲドン]のような話しではなく、非現実的な終末装置で炙り出された、生々しい存在感ある現実物語であった。
    読後、自ずと最期に手元に残るものについて考えた。

  • 吉田真悟
    吉田真悟
    投稿画像

    『銀河で一番静かな革命』
    マヒトゥ・ザ・ピーポー著
    (2025/04/10幻冬舎文庫)
    6/13読了

    写実的であり詩的な文章は好きな部類。
    それと魅力的な登場人物達。ゆうきに光太、ましろといろは親娘。実際に神泉駅の周りに生息していそうだ。いろはに逢いたいよ。

    SFでもなく、ファンタジーとも違う、非現実的な世界の終わりが通達されて、最後の日、皆は何をするのか?無関心や絶望から希望
    へと全てが傾いて行く。理不尽でも理解できなくても生きなくてはならない、そんな使命すら感じる。明日はきっと来るよ。俺にもね。

    マヒトゥ・ザ・ピーポーさんの他の文章も読んでみたいと思いました。

  • 吉田真悟
    Yuriko NakanoYuriko Nakano
    投稿画像

    新川帆立さんの『ひまわり🌻』を読了しました。
ひまわりの花は以前から大好きでしたが、その花言葉までは情け無いことに知らなくて…
    ひまりさんそのものがひまわりの花言葉に見事に重なりました。

    家族や周囲の人々の支えを受けながらも、ひまりさんが司法試験を突破するまでの道のりは、言葉では言い尽くせないほどの努力の積み重ねがわかり、いま「普通に生きていること」がどれほどの奇跡で、どれほど感謝すべきものなのかと、改めて気づかされました。
    そして同時に、組織や社会の冷たさ、会社という場所は、人の努力や思いに必ずしも報いてくれるとは限らない…その現実に胸が痛みました。

    そんな中でもひまりさんのまっすぐな強さに
    私はとても惹かれました。


    吉田さん
    教えて頂きありがとうございます。
    私、今八方塞がりだと自分の事思っていましたが、まだまだ大丈夫と思うようになれました(^^)

    2
  • 吉田真悟
    umiumi
    投稿画像

    総合商社ではたらき順風満帆の日々だった主人公・朝宮ひまりの身に起こった不慮の事故。
    その事故で四肢付随となったひまりが、司法試験を目指し社会人として再起するまでの不屈の日々を描いた新川帆立著[ひまわり]を読みました。

    ひまりを襲った事故、四肢付随という非日常性、そしてひまりが挑戦する司法試験という非凡性を通して、凡人にも訪れる幸不幸それに伴う喜怒哀楽をどう享受し、どう乗り越えていくのかというエッセンスがより際立って、身に沁み入りました。
    どんなことが起こっても、信頼できる他者の声に耳を傾け、それを素直に実践してみる。卑屈にならずに、自分にいま出来ることを最大限する。
    そうすることで道は開けていく。
    挫折による焦燥感も不安も、コンプレックスも、行動でしか溶けていかない。
    私自身が内に抱えるそれらは、この本を読むこと、ひまりの行動に心を重ねることで少しずつ氷解したように感じました
    。これからの現実にも活かしていきたいです。

    いまこの本を手に取ることができた幸運、その幸運をもたらしてくださった吉田さんに感謝したいです。そして読み終えたあと、この本を出している出版社の社長が見城さんなのだと、見城さんのお名前を拝見し胸が震えました。

    ありがとうございました。

  • 吉田真悟
    吉田真悟

    野暮なコメントお許しください。🙇‍♂️

    今後、病気や怪我や老いによって四肢が動かなくなり、他人に迷惑をかける事が予想されます。恥辱か諦念か脳内シミュレーションはしといて損はないと思いました。

    それと、この世に自分の事を理解している人がたった一人でも存在したなら、その人のために生きられる(戦える)とも思いました。

    そういう点で新川帆立著『ひまわり』と村木嵐著『まいまいつぶろ』は私にとって同じテーマに捉えています。

    朝宮ひまりとヒカル、
    九代将軍徳川家重と大岡忠光、こういう関係に憧れます。

    よかったら『まいまいつぶろ』も読んでみてください。
    また違った感動を覚えると思いますよ。

    1