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渡辺貴子(「ろう文学」編集&発行人)

いつも好んで着る派手さを避けて わざとくすんだ服を選びサングラスをかける 何もかもから解放されたくて 家を飛び出し雨に濡れたネオンの中を歩き出す 自分で選んだ道 自分で選んだ人生なのに やり切れなさが心の奥で澱んでいる がむしゃらに走って がむしゃらに生きてきたつもりなのに まだまだ張り付いている しぶとくしがみついてなかなか離してくれない ちょっとでも解放されたくて ちょっとでも頭から抜き取りたくて 許して、と祈りたくなる衝動に駆られる 一瞬の安らぎは存在するけど 永遠の安らぎはこの世には存在しない 目が眩むようなまばゆい世界に身を置き ひとが羨むような生き方をしているかもしれないけど 本当の心は誰も知らない 知ることが出来ない 伝えたい人にありったけの言葉で伝えても ほんの少ししか伝わらないかほとんど伝わらない それでも生きていく 生きていく限りは この世とうまくやっていくしかないんだ この命が尽きるまで闘い抜きそして共存していく それしかないんだ 伝えたいことが伝わらなくても 1ミリしか伝わらないと分かっていても 何とかして伝え続けていく どんなに伝わらなくても ほんの一瞬だけ分かち合える奇跡がある それは確実なことだから 最後まで諦めず伝え続けていく そんな生き方がしたい 雨が乾きつつある暗い道 あてもなく歩き回り ネオンのある街に戻る 諦めに近いけど決して後ろ向きじゃない 「生きていく」しかないんだ 命を全うするんだ 君は本当にしたいことが出来ているかい 君は本当に会いたい人に会えているかい

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渡辺 貴子(「ろう文学」編集&発行人)
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