三上雅博のトーク
トーク情報三上雅博 見城徹見城徹 静岡県立清水南高校は海のすぐ近くにあった。
僕は海が良く見える窓側に席を取り、つまらない授業中はずっと海を眺めていた。海上を進む大型船や雲の流れを追っていると空想が膨らみ飽きることがなかった。放課後はほぼ毎日浜に出て、
青春の感傷を海にぶつけていた。高校の3年間僕は海と共にあった。卒業式の日、1学年下の初恋の女生徒と校門で待ち合わせて、折戸の浜を富士山を仰ぎながら三保の松原に向かって歩いた。初めてのデートだった。潮風が憧れ続けた彼女の漆黒の髪をなぶり僕の頬に当たる。甘やかな香りがした。今思えば僕の人生で一番幸福な瞬間だった。ただただこの時間が永遠に続いて欲しいと祈るような気持ちだった。折戸の浜には僕の青春が埋まっている。折戸の海と空と風によって僕は作られた。今でも重大な決断をする前には折戸の海に行く。海を眺めながら覚悟を決めるのだ。74歳になってしまった。思いもよらない人生だった。遠くまで来てしまった。こうして海を見ているとあの日に戻りたいと強く思う。
何にも無かったけれど、幸福だったあの日に。
