zettuのトーク
トーク情報zettu 藤田晋藤田晋
「こんな苦しい思いを和らげるためには酒を飲むしかない」と思い、「あ、そうだ、俺はその酒をやめているのだ」と思い出して絶望するということを7秒に4回宛繰り返していた。
(中略)そして日々を危機感の中で生きていた。その危機とは、「俺は酒を飲んでしまうのではないか」という恐怖であり、それは、「また酒を飲んでしまうダメ人間としての自分」を否応なしに認めざるを得ないという敗北感に直結する恐怖であったが、同時に、「こんな苦しい思いをして、いったいなんの意味があるのか」という問いでもあり、それは脳内に響く、「いいぢやありませんか。今日酒を飲んだから明日死ぬという訳ぢやないんですから」という変なおばはんの声であった。
このそのおばはんは執拗で、いくれ黙れと言っても、その囁きをやめず、言うことを聞かないでいると、その熱い身体をぴったりと密着させてきて、それでも剛情にしていると、ついにはテイクダウンをとり、腕を決めて放さない。そのうえでなお「いいぢやありませんかりませんか」と言いつのってやめない。zettu 死ぬために生きる死ぬために生きる 台湾の亜熱帯の夏の夜を汗だくで駆け回る選手達、僕はその様子をエアコンが効いた部屋でぬくぬくと観ていた。
僕はこの試合でプレーするはずだった。
チームとの口頭契約が済み、僕は渡航に向けて準備を進めていた。
8月7日に渡航し、中国でチームに合流する予定だったが、渡航予定日の前々日になってもサイン済みの契約書と航空券が送られてこない。
前日にチームから契約を破棄したいとの連絡が来た。
「ビザが降りなかった。運が悪かった」
とのことだったが、シンプルに運を味方につけるだけの努力が足りていなかったと言うことだ。僕が努力だと思っていたものは、圧倒的努力には達していなかった。
その連絡の少し後に、チームのSNSから僕の代わりとなる選手の獲得が発表されていたので、1年半ブランクがある選手を国際大会で起用するのが、ただただ怖かったのだと思う。
僕がチームの首脳陣でもそう考えるので、至極真っ当だ。
それを覆す実力を見せられなかった僕の落ち度。
早々に契約を交わし切ることもできていたはずなのに、様々な可能性を模索して早めに連絡を取れていなかった僕の落ち度。
とにかく身から出た錆。足りなかった。
僕は僕のバリューを見誤っていた。
今の僕には何の価値もないということを、もっともっと認識しておくべきだった。
このチームからのオファーに全振りした僕は、他のチームとの話を打ち切っていたので、簡単に言うと路頭に迷っている。
自分の無力さと劣等感、僕の代わりで加入した選手が明らかに活躍できていないことに対する、ほんの少しの優越感。
そんな優越感を抱いてしまう自分の駄目さ加減が嫌になり、むしゃくしゃとした僕は、試合観戦後にお気に入りの白ワインに手を伸ばした。
復帰前の数週間はお酒を抜くと決めていたので、自分自身との約束を破ったことになる。
こんな弱い人間だから、全てにおいて中途半端なのだ。
いわゆる酒鬱という現象にその想いが乗っかり、とてつもなくブルーになった。紺色に近い濃いブルー。
凄まじい自己嫌悪に襲われ、飲んだ分を吐こうと喉の奥に指を突っ込むが、お酒に対して比較的強いため吐こうにも吐けない。全く胃から逆流してこない。
しかし、丹精込めて作られたワインを吐くなんて失礼だなと、ふと我に返って僕は吐こうとするのをやめた。
こんな恥ずかしい一連の流れを誰かに見てもらうなんて、一体自分の自意識はどうなってるんだとも思うが、書かなければ、吐かなければ自分が爆発してしまいそうな気がした。
ここで自分を少しだけ救済し、やるべきことを積み重ねる。足りない努力を積み重ねる
飲んだ分を取り返すだけのことをやる。
まだまだプロセス。契約してもプロセス、契約できなくてもプロセス。
死ぬまでのプロセス。
これらを乗り越えた後のほんの少しの甘美、死に際の微笑を勝ち取るために、ただただやれ。
できるかできないかではない。やる。