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渡辺貴子(「ろう文学」編集&発行人)

ろう文学を始めてしばらくした頃、ろう者の大学の先生にゲストとしてエッセイを書いていただけるよう、お願いしたことがある。 その時、忙しいからという理由で断られた。言葉自体は丁寧だったけど、その時に悔しい思いをした。 無名の私が大学の先生にお願いすることはとんでもないことで、ごく当たり前の結果なのだけど。 そして、3年位経った後、私はその大学の先生のことを思い出して再アタックした。ろう文学が第10号以上続いていて、少しの自信がついたからかもしれない。 その時、先生は非常に驚いていた。ろう文学、まだ続いていたの?!というふうに。 何回かメッセージを出させていただいた末、ようやく書いていただけることになった。 そして昨年、Zoomで30分間、お話しする機会を得て、色々なお話を聞かせていただいた。 それからしばらくした後、その先生が受け持っている授業のゲストスピーカーに呼ばれることになった。 寝耳に水とはこのことで、思いもよらぬことだったから驚いたが、それよりも新しい経験をさせていただけるというわくわくする気持ちの方が大きかった。 ろう文学だけでなく、私が年配のろう者を対象とした日本語勉強会を開いていることも評価されたようだ。 もうすぐ4月が終わるが、5月の楽しみの一つがゲストスピーカーとして話させていただくことだ。 話す内容を考えて、必要なことを調べてまとめることは憂鬱なことではあり、それを考えるだけでも緊張することではあるが、新しい経験をさせてもらえるということに喜びを感じている。 世界から見たらちっぽけな自分だけど、そんな自分にも無限の可能性はある。両手をいっぱい伸ばして可能性を広げていく。 …だが実際には、生きている者として「生」を思いっきり堪能してやる、「生」を見せつけてやるという気持ちが心の底に潜んでいることも否めない。

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渡辺 貴子(「ろう文学」編集&発行人)
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