トゥリ「お前さぁ…」
大悪魔は、ゆーたの人間としての汚さや狡さに、思わず説教をしそうになっていた。
しかしながら大悪魔として、彼に人道を説く事は、逆説的に邪道となる。喉まで出かかった正論や倫理を、飲み込んで腹に収めた。
トゥリ「んー、まぁいいや!!」
ゆーたが重くした空気を吹き飛ばすように、大悪魔は勢いをつけて立ち上がった。
ゆーた「ひっっっ!!!」
再び失禁する。
まるで湧き水のように、ゆーたは失禁で恐怖を体現する。
先ほど見せつけられたゆーたの人間としての汚さが、失禁の汚さを凌駕したのか、しょうはその様子を意外なほど冷静に見ていた。
そして冷静に、論理建てながら、この状況を打破する一手を模索した。
がいちゃんの悪口を言った。
がいちゃんは神様だった。
神様の悪口を言ったから、悪魔に殺されそうになっている。
何が出来るか。
そうだ、謝ろう。
簡単だ。
簡単な式だった。
簡単な事なのだ。
悪い事をしたのだから、謝ろう。
死を目前にして、
『まだやれる事がある』
という意識が、しょうの恐怖を消し去り、その落ち着きはある種の覚悟を周囲に知らしめた。
しょう「すいませんでした。」
トゥリ「おう。いいよ。」
ゆーたのズボンの水滴が1粒、ズボンから地面に落ちるその速さよりももっと速く、大悪魔はしょうを許した。あまりの速さに、しょうは理解がまだ出来ていない。
しょう「え、いや、え?」
トゥリ「だーかーら!!もういいつってんのよ!!!!」
しょう「でも」
そう続けようとしたが、大悪魔はしょうの目を見ていた。その目は、初めて二人の前に現れた時の、ギラギラした攻撃性を失い、鋭く冷たく、言うなれば『興味の無さ』を表現していた。そのあまりの冷たさに、しょうは次の言葉を吐くことができなかった。
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