ヤスナガのトーク活動再開
トーク情報- ヤスナガ
ヤスナガ 私たちはふたたび、人間はちっぽけな存在である、と考え直してみたい。だが、それがどれほど小さくとも、草の葉の上の一滴の露にも天地の生命は宿る。生命という言いかたが大げさなら、宇宙の呼吸と言いかえてもいい。
空から降った雨水は樹々の葉に注ぎ、一滴の露は森の湿った地面に落ちて吸い込まれる。そして地下の水脈は地上に出て小さな流れをつくる。やがて渓流は川となり、平野に抜けて大河に合流する。
その流れに身をあずけて海へと注ぐ大河の水の一滴が私たちの命だ。濁った水も、汚染された水も、すべての水を差別なく受け入れて海は広がる。やがて太陽の光に熱せられた海水は蒸発して空の雲となり、ふたたび雨水となって地上に注ぐ。
五木 寛之
大河の一滴 (幻冬舎文庫) より