見城徹のトーク
トーク情報見城徹 見城徹見城徹 ⬆︎ 中上健次と飲み始めると大概は朝までになった。文学議論を始めると止まることがなかった。 きつかったのは中上健次の作品か現代作家の作品を自分の視座で批評しないと許されないことだった。だから僕は中上健次によって編集者として鍛えられたと言っていい。中上健次に金を貸すのはしょっちゅうで、大概は返って来なかったが、それでいいと思っていた。ある時突然、中上健次が故郷の和歌山県新宮市で特別講座をやると言い出して、毎回のゲストを中上健次の希望に沿って僕が交渉し、新宮までアテンドすることになった。ギャラは無し、交通費は僕が負担した。1回目は水上勉、その後、佐木隆三、唐十郎、石原慎太郎、吉本隆明、森敦と続いて行く。どのゲストも気持ち良く応じてくれた。とにかく新宮までは遠かったので、その道中、僕はゲストとゆっくり話すことが出来た。佐木隆三とは荒くれ男の祭りとして有名なお燈祭りにも白装束に松明を持って参加して、佐木隆三はボコボコにされてしまった。気が付いた僕も応戦したが時すでに遅しで佐木隆三は血だらけだった。殴り合いと言えば、新宿の飲み屋での喧嘩では中上健次と僕のタッグは連戦連勝で負けたことがなかった。確かに僕は20代の後半を中上健次と捩れ合うように生きていた。デタラメだったが愛おしい日々だった。


