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見城徹

1977年夏。姉妹都市である下関と韓国・釜山は親善事業として関釜陸上競技大会を毎年交互に開催していた。長府高校の陸上部員・郁子は、この年、下関側選手の一人として釜山での大会に出場する。そこで、同じ高跳び競技に出ていた釜山の高校生・安大豪と出会う。帰国前夜、安は戒厳令中にもかかわらず、郁子の宿舎まで会いに来てくれた。郁子はそんな安に淡い恋心を抱き、“来年のチルソク(七夕)に再会しよう”と約束を交わす。この時代、日韓にまたがる恋は前途多難。それでも郁子の初恋をなんとか実らせようと親友たちも懸命に後押しするのだった…。 ↑ これが[チルソクの夏]のあらすじである。 この高校時代の恋だけでしばしば胸が締め付けられるのだが、激しく心を揺さぶられるのは26年後に下関で再開された、郁子も実行委員の1人として参加した関釜陸上競技大会のラストシーンである。あのチルソクの日に再会出来なかった2人はそれぞれの人生を歩き始める。彼は実業家として成功し、彼女は離婚を経験しながら自分の人生を懸命に生きている。26年後の2人の再会のシーンを何と表現したらいいのだろう?一片のメモを頼りにこの大会を再開させるために多大な金銭的援助をした彼が待つスタジアムの場所に歩いて行く彼女。無人の廊下。[なごり雪]を日本語で口ずさみながら彼は立っている。気付いた彼女。そこで、ストップモーション。流れる韓国語の[なごり雪]。数々の2人の26年前のシーンを写しながらクレジットが上がって来る。やがて、[なごり雪]は日本語に変わる。 人は誰でも抗えない時間を受け入れてひたむきに生きている。2人にも26年の年月が否応なく流れた。時間という運命。生きるという切なさ。 その全てが凝縮された感動のラストだった。 思い出しただけで止めどなく涙が溢れる。

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