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見城徹

興味深々生さん。吉本は革命闘争に勝利出来るとは露ほども考えていないのです。絶望的な戦いであっても自分は逃げ出す訳には行かないと覚悟を決めているだけです。たとえ絶望的であっても戦い切るしかないと。それは吉本の内部の問題であり、人間としての矜持の問題です。 同時に、吉本が陥っていた人妻との道ならね恋の行方が吉本を苦しめていました。二重の過酷さの中で、吉本の目に映った「マタイによる福音書」はキリスト教の成立に至る致命的に暗い、負の捩れた感情に満ちていたのです。自己否定と暗闘する吉本が「マタイによる福音書」をバネに再生しようとした自分肯定の試み。人間の精神の営みの暗さが通り過ぎるマタイ伝に[関係の絶対性]を見い出した時、吉本の自己肯定の絶唱が読む者の胸に染み渡るのです。「マチウ書試論」が吉本の思想的出発点と言われる所以です。

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