三上雅博のトーク
トーク情報三上雅博 見城徹見城徹 秋元康いや、達人でも何でもありません。ジタバタ、生きています。カッコよく生きようなんて、突っ張りを捨てた分だけ楽になりました。カッコ悪くても、泥臭くても、美学はあります。見城徹の自己嫌悪に学んでいます。あるね、美学が。目の前の足し算を取りに行かない。見栄やカッコ付けがない。だから懐が深い。軸がブレない。自分のフォームが崩れない。安定感がある。沢山の切ない戦いを経て今の境地に突き出たんだろう。「思い切りの良さ」と「義に生きる分厚さ」。「極端」と「安定」。「虚無」と「熱狂」。「動」と「静」。「足し算」と「引き算」。矛盾する2極を飲み込んで統合し、乗り越えて、微笑しながら立っている。これだけの最前線にいながらセコさやしたたかな感じが微塵もない。見事だよ。
- 三上雅博
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これは説明では無い。
判断と時間の記録として、ここに置く。
【天然本鮪】
その日、豊洲市場の仲買「やま幸」より、厳選された特別な天然本鮪が届く。
鮪の花形、腹上一番。
朝の競りから大阪へ。
この美しい赤のグラデーションは、その日のうちに運ばれてくる。
室内は常に十四度前後に保つ。
平均しておよそ十キロほどの腹上を、赤身・中トロ・大トロの三つに切り分ける。
それぞれから、その日いちばん輝く部位だけを確固別にサク取りしていく。
もし細かな血管や筋があれば、小さな毛抜きで一本一本、丁寧に取り除く。
大量の昆布を張った水を、ごく弱火で長時間かけて取った鍋に、純米吟醸酒をひと回し。
火を強め、沸騰させ、アルコールが半分ほど飛んだところで、先の鮪を一瞬だけ潜らせる。
すぐに氷水へ落とし、即座に引き上げる。
水気をよく拭き取り、数分ほど鮮度維持装置で落ち着かせてから、
約五年、毎日火入れを重ね、継ぎ足し続けてきたヅケダレに漬ける。
時間にして、数時間。
だが、鮪が届いてからここに至るまでのすべては、
「鮨」として口に運ばれる「その瞬間」から逆算されている。
鮪を初めて見た、その一瞬から、時間はすでに組み立てられている。 - 三上雅博
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【泥障烏賊(アオリイカ)】
泥障烏賊には、「千回」近い飾り包丁を入れる。
瀬戸内でその日に水揚げされた一キロ以上のものを競り落としてもらう。
それが店に着く頃、まだ胴の色は、流れる電飾の様に移り変わっている。
室温はいつも約十四度に設定してある。
良く冷やしたまな板の上で、真っ赤になるまで手を冷やし、
泥障烏賊に一切水を充てる事なく、手早く、破れぬ様に優しく内臓を取り除き、皮を剥く。
その時に状態によって切り始める時間は異なる。
鮮度が良すぎると細胞が動いてしまい、細かく包丁は入れられない。
かといって置き過ぎるとねっとりとしてきて、細かく包丁は入れられない。
鮮度維持装置の中で、動かなくなる瞬間を待つ。
そうして、絶妙なタイミングで一貫ずつに整形する。
厚さも整え、一の包丁をどれだけゼロに近づけるかだけを考えながら、
三方から、整形したその厚さの八割ほどの深さで止まる様に、包丁を入れていく。
最後に薄く残った底の部分に、あらゆる角度から刃打ちを繰り返す。
それを昆布出しに塩と酒を入れた鍋でサッと潜らせ、氷水に落とし、
すぐに引き上げ、良く水気を切る。
水分を飛ばすため、鮮度維持装置に少し置く。
これら全てを、鮨となる瞬間から逆算して取り行う。

