君看よ双眼の色
語らざるは憂い無きに似たり
君看(み)よ双眼(そうがん)の色
語らざるは憂(うれ)い無きに似たり
この言葉は良寛の言葉ではありませんが、良寛はこの言葉を愛し、美しい書にしています。
この言葉は『禅林句集』にもあり、白隠(はくいん)禅師の『槐安国語』(かいあんこくご)が出典です。『槐安国語』は『大燈(だいとう)国師語録』に白隠禅師が評唱や下語(あぎょ)を付したものです。
大燈国師の「千峰雨霽露光冷(せんぽうあめはれて ろこうつめたし)」という句の後につけられた白隠禅師の下語(あぎょ)です。
大燈国師の句は「見渡す限りの山々の草木に雨上がりの露が輝いている」というような意味でしょう。雨嵐になってもやがては晴れ、何も語ることなく露が光り輝く、という自然の摂理がそのまま仏法の真実であることを詠っているようです。
白隠禅師のこの句「君看(み)よ双眼(そうがん)の色 語らざるは憂い無きに似たり」は、「私の二つの眸(まなこ)を見て下さい。私は憂いや悲しみを語りはしないので、憂いや悲しみは何一つないように見えるでしょう。しかし、語り尽くせないほど憂いや悲しみは深いのです。でも、同じような憂いや悲しみを抱く者が私の目をみるだけで、一言も言葉を交えなくても、私の心は分かるはずです。だから私の二つの眸を見て下さい。」というような意味でしょう。
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