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見城徹

昨夜の23時58分に石井妙子・著[女帝 小池百合子]を深い溜息と共に読み終わった。こんなに一気に読んだのは実に久し振りだ。一人の人間を描くのに費やした労力と時間に感嘆する。描かれた一人の人間が読む者にもたらす救いの余地のない絶望感に打ちのめされる。石井妙子によって描き尽くされた一人の人間の眼差し。仕草。声。体臭。汗…。小池百合子は目の前で鮮やかな総天然色で立ち現れる。こんな作品がかつてあったろうか?これこそ真っ当なノンフィクションの仕事だ。 宮部みゆきのミステリイの傑作[火車]のラストはこうだ。 こっちから何を尋ねるかなどは問題じゃない。俺は、君に会ったら、君の話を聞きたいと思っていたのだった。 これまで誰も聞いてくれなかった話を。君がひとりで背負ってきた話を。逃げ惑ってきた月日に。隠れ暮らした月日に。君がひそかに積み上げてきた話を。 時間なら、充分ある。 新城喬子ーー その肩に今、保が手を置く。 石井妙子はこの作品の最後をこう締めくくる。 彼女に会う機会があったなら、私は何を聞くだろう。 崖から飛び降りたことを後悔しているか、それに見合うだけの人生は手に入れられたか、自分の人生を歩んでいるという実感はあるのか、あなたは何者になったのか。そして、太陽はあなたに眩しすぎなかったか、と聞くだろう。 僕はこの4年間、ずっと小池百合子を批判して来た。本書の301ページに僕も彼女の本を出版した出版社の社長として登場する。一度立ち話しかしたことのない彼女から出版の話を持ちかけられた時、ちょっとした揉め事があった。彼女はそんなことは意にも介さず出版を最短で実現した。幾つかの謎は残ったが本書を読んでそういうことだったのかと納得した。読み終わって、小池百合子に僕も聞いてみたい。 あなたにとって人生とは何だったのか?嘘と裏切りだけを武器にここまで来た。あなたは今、これで満足か?

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